2026.07.01
< お先へどうぞ −自未得度先度他− >
相田みつを
「お先へどうぞ−」
やさしくうつしい日本語ですね
ある仏典のあることばに
「自未得度先度他」と
いうのがあります
棒読みにすると
「じみとくどせんどた」
和文になおすと
「おのれ未だわたらざる先に他を度す」
と、読みます
いいことは、他人様を先に−
自分のことは後まわし
という意味だそうです
わたしは、宗教家でも
学者でもありませんので
このことばの出所や出典を知りません
しかし、
「お先へどうぞ−」という
暖かい日本語は
この「自未得度...」がもとになって
できたのではないか−
と、素人判断で思っております
おそらくまちがっているでしょう
まちがっていてもいいんです
わたしはそう信じたいんです
遠い遠い、先祖の日本人が
こんな美しい、暖かい言葉を
残してくれたんです
他人のことなんかそっちのけ
自分さえよければ−
我先に、我先に−と
みんな夢中で突ッぱしる
物はいっぱいありながら
殺伐として満たされない
心の涸れきった世の中
もう一度
「お先へどうぞ−」
という、うるおいのある
美しい日本語で
お互いに呼びかけ合える
世の中になって欲しいなあ......
梅雨にぬれて
一段と色あざやかな
あじさいの花が
ある日の午後しみじみと
わたしに語りかけてくれました
梅雨のまっさなか、
雨にぬれて、あじさいの花がいっそう色あざやかに映る季節となりました。
今回ご紹介するのは、
人と人とが、やさしく関わり合うことの大切さにそっと目を向け、忙しさの中で忘れがちな、他者を思う心に静かに問いかける一篇です。
この詩では、
まわりのことに目を向ける余裕もなく、
「自分さえよければ−」と、
急いで、急いで進んでいく人の姿が描かれています。
物はあふれているのに、
なぜか満たされない気持ち。
どこか乾いてしまったような、
少しさびしい心の風景が浮かび上がってくるようです。
そんな中で語られる、
「お先へどうぞ−」という、やわらかなことば。
ほんのひとことですが、
その中には、
相手を思う気持ちや、
少し立ち止まるゆとりが、
静かに息づいているように感じられます。
忙しさや焦りの中にいると、
つい忘れてしまいがちな、
こうした心のやりとり。
けれど、
ほんの少し誰かにゆずるだけで、
その場の空気が、ふっとやわらぐこともあるのではないでしょうか。
詩の後半にあらわれる、
梅雨にぬれたあじさいの花。
そのあざやかな色合いは、
乾きがちな心に、そっと潤いを与えてくれる存在として、
語りかけてくれているように思えます。
あわただしい日々の中でも、
ふと足を止めて、
やわらかな言葉を交わせる瞬間を、
少しだけ大切にしてみたくなります。
みなさまは、どんなふうに感じられましたか。
相田みつを美術館
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次回は、2026年7月15日頃にまた違う作品のコラムとリール動画の公開を予定しております。